記念講演:戦後民主主義の再生に賭ける
……「北東アジア共同の家」は可能か……


内田 雅敏氏(時習16回生)
弁護士/四谷総合法律事務所代表

 1945年、敗戦の年に生まれた私はまもなく60歳になります。弁護士という仕事をしていますと、今の世の動きがわりあいストレートに伝わってきます。長びく不況の中で、裁判所における破産事件数の増加、犯罪、とりわけ青少年による凶悪犯罪の増加、親による子供の虐待・死等々、そして「テロ」に対する恐怖、大変不安な社会となっています。
 戦後60年、私達は一体何という社会を作り上げてしまったのかという思いがあります。こうした不安、そして「安全希求神話」を背景として、今、憲法、教育基本法、司法制度等々、戦後的なものの見直し論議が「声高」に語られようとしています。また、北朝鮮による「拉致」問題を契機に急激に排外主義的な機運が高まっています。戦後民主主義は虚妄であったというのでしょうか。
 しかしそのような方向で、つまり戦後的なものの「見直」ということで事態の解決がなされるでしょうか。実は戦後的なものに問題があったのではなく、むしろそれを徹底して来なかったところにこそ問題があったのではないでしょうか。
 2001年ヴァイツゼッカー元大統領を委員長とするドイツ国防軍改革委員会は「ドイツは歴史上隣国すべてが友人となった。・・・」という書き出しで始まる報告書を作成したといいます。かつての「同盟国」ドイツが戦後どのようにして欧州の各隣国と「和解」すべく努力をして来たか、そしてどのようにして「欧州共同の家」が形成されてきたかということは、日本がアジアの隣国とどのように付き合うべきかを考える上で大きな示唆を与えてくれるものと思います。
 残された人生を戦後民主主義の再生と「北東アジア共同の家」構想の実現に賭けたいと思います。